The Five Whys /リサーチ・アイディエーション時「なぜ?」を繰り返し本当に優れたアイディアなのかを追求する

ANKR DESIGN

[いつやるか] リサーチ、アイディエーション
[用意するもの] 付箋、ペン
[注意点] ストレートに「なぜ?」を繰り返すと尋問のようになってしまうので、質問の仕方に注意を払う

日本語で「なぜなぜ分析」と呼ばれるこの手法は、問題発生時に真因を探るため「なぜこの問題が起こったのか?」を繰り返し問います。新規プロジェクトでは「なぜこのプロジェクトが優れているのか?」「なぜユーザーはこのプロジェクトを選んでいるのか?」という観点で追求することができます。

1950年代にトヨタ生産システムの設計者として活躍された大野耐一さんが、彼の著書「トヨタ生産方式」でこの手法について言及したことで広く知られるようになりました。大野さんは「5つの質問を繰り返すことで問題の性質とその解決策が明確になる」と考えていました。

一つの事象に対して、5回の「なぜ」をぶつけてみたことはあるだろうか。言うはやさしいが、行うは難しいことである。たとえば、機会が動かなくなったと仮定しよう。

「なぜ機械は止まったか」

オーバーロードがかかって、ヒューズがきれたからだ。

「なぜオーバーロードがかかったのか」

軸受部の潤滑が十分でないからだ。

「なぜ十分に潤滑しないのか」

潤滑ポンプが十分に組み上げていないからだ。

「なぜ十分くみ上げないのか」

ポンプの軸が摩耗してガタガタになっているからだ。

「なぜ摩耗したのか」

ストレーナーがついていないので、切粉が入ったからだ。

以上、5回の「なぜ」を繰り返すことによって、ストレーナーを取り付けるという対策を発見できたのである。

(中略)

5回の「なぜ」を自問自答することによって、ものごとの因果関係とか、その裏にひそむ本当の原因を突きとめることができる。

現在、この方法はトヨタをはるかに超えて使用されており、リーン開発の世界で特に人気があります。各アイディアに対して「なぜ?」を5回以上繰り返しましょう。「なぜそのアイディアなのか?」「なぜそのアイディアではないといけないのか?」付箋に書き出して、抜けているところがないか、より良いアイディアはないか、今のアイディアを少しアレンジできないか考えます。小さなことでも「なぜなぜ分析」を繰り返してみることで、考える訓練にもなり、問題には複雑に絡み合った原因があるということを理解できるようになるでしょう。本質的な問題の存在に気付くことが、なぜなぜ分析の狙いです。

実施方法
1.
元となる問題をホワイトボード、A4以上の紙、付箋などに全員が見えるように書いて、必要があれば貼り出しましょう。

2.
なぜ?を繰り返して、都度出た意見は付箋に書き出して問題の近くに貼り出しましょう。どの意見が本当に問題の答えとしてふさわしいかをチームで話し合って導き出しましょう。このとき、意見には明確に「誰が / 何が」「どのような問題を抱えていたか」主語と具体的な問題を書くようにしてください。

3.
次のなぜ?に進む前に、答えと分析を逆にして「だから」で繋いでみましょう。逆さに読んでも辻褄が合えば、次のなぜ?に進みましょう。

4.
最終的に導き出せた答えは意見として出た付箋とは別の色の付箋、もしくは別の紙に大きく書き出して全員が合意できたことを確認しましょう。

注意点
まず、分析を行う前に何のために分析をしたいのか明確にしましょう。分析する課題を誤ると、当然ながら分析の結果も曖昧なものになってしまいます。分析する課題を明確にするためには、急いで課題を決めつけず「何が問題であったのか」をしっかりと検討し、具体的な事象や数を課題にいれると良いでしょう。
例:なぜユーザーは会員登録をしなかったのか?なぜ19時に全員退社できないのか?など…

また、個人ではなく組織として仕組みやシステムの問題を改善する意識を持つように心がけましょう。問題を個人的に捉えると、分析に感情や気持ちにが入ってしまって根本的な解決策を得ることが難しくなります。例え問題が個人的なものであっても組織の問題として捉え、誰かを攻撃することは避けましょう。組織の問題として捉えれば問題点を客観的に導き出すことが容易になります。「どうしてそうなったのか?」よりも「なにがそうさせてしまうのか?」にフォーカスすることもポイントのひとつです。

更になぜ?を繰り返すなかで、つながりや順序を飛ばさないように気をつけましょう。分析を進めることを優先すると答えが飛躍してしまっていることがあります。分析を進めるうえで大切なのは「漏れなく原因を抽出すること」です。話が飛躍しているか確認したいときは、答えと分析を逆にして「だから」で繋いでみましょう。逆さに読んだときに話の辻褄が合えば、その分析は正しいと考えて良いでしょう。

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